日本臨床細胞学会雑誌
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原著
甲状腺低分化癌の細胞像
前川 観世子廣川 満良柳瀬 友佳里隈 晴二宮内 昭加藤 良平越川 卓覚道 健一坂本 穆彦
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2009 年 48 巻 5 号 p. 268-273

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抄録

目的 : 甲状腺低分化癌の細胞像に関する報告は少なく, 細胞学的特徴についても明確にされていない. 本研究では低分化癌の細胞学的特徴とそれらの診断的意義を明らかにすることを目指した.
方法 : 甲状腺低分化癌 57 例を対象とし, 組織標本上に占める低分化成分 (索状, 島状, 充実性) の比率により, 1 群 (20%以下), 2 群 (20∼50%), 3 群 (50%以上) に分けて, 細胞診所見を検討した.
成績 : 組織標本における索状, 島状, 充実性パターンに相当する細胞診標本上の出現様式は, それぞれ索状集塊, 島状集塊, 疎結合性集簇で, それらの出現率は 45.6%, 21.1%, 10.5%であった. 核分裂像は低分化癌の 24.6%にみられ, 特に濾胞癌型低分化癌 3 群では 7 例中 5 例にみられた. 乳頭癌型低分化癌では高分化型乳頭癌の特徴として一般的に知られている所見が乏しかった. 濾胞癌型低分化癌では核が腫大し, 核小体が目立つ症例が多かった.
結論 : 甲状腺低分化癌の細胞診では, 細胞所見よりも出現パターンが重要視されるべきと思われた. 低分化成分が主体を占める低分化癌症例においては低分化癌の推定が可能と考えられる.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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