日本臨床細胞学会雑誌
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特集 <甲状腺穿刺細胞診—濾胞性腫瘍の問題点—>
濾胞性腫瘍の細胞診断ガイドライン作成に向けて
覚道 健一亀山 香織伊藤 公一中村 浩淑
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2010 年 49 巻 1 号 p. 37-41

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抄録

甲状腺細胞診断では, 多くの腺腫様甲状腺腫と濾胞性腫瘍 (濾胞癌と濾胞腺腫) が「良・悪性鑑別困難」に診断され, 悪性の可能性 (確率) は一般的に明示されないことが多い. そのなかで他の臨床所見 (年齢, 性別, 腫瘍直径と増大傾向, 画像所見など) で悪性の可能性が高い群のみが外科的適応となる. しかしながら, 患者にとって「良・悪性鑑別困難」の診断を受けたときの精神的不安と, 臨床家の細胞診への期待とを考えたとき, 細胞診断によるより正確な手術適応の絞り込みが望まれる. 「良・悪性鑑別困難」の運用基準を検討すると, 腺腫様甲状腺腫と濾胞性腫瘍 (濾胞癌と濾胞腺腫) の細胞学的鑑別診断基準が診断者により若干異なり, 「良・悪性鑑別困難」の運用基準も診断者により異なることがワークショップで明らかとなった. 細胞診断基準のみならず, 組織診断基準の統一と標準化が必要と考えられ, 「良・悪性鑑別困難」を 3 群 (良性の可能性が高いもの, 悪性の可能性が高いもの, 中間的で真の意味で鑑別困難なもの) に細分類することが薦められ, その細胞所見や診断基準の標準化が必要と考えられる.

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© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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