日本臨床細胞学会雑誌
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原著
体腔液細胞診による腺癌症例の原発巣の同定
—細胞転写法を用いた免疫細胞化学染色—
三田 俊二前田 昭太郎細根 勝片山 博徳礒部 宏昭岩瀬 裕美日吾 美栄子鈴木 美紀
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2011 年 50 巻 2 号 p. 89-94

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抄録

目的 : 体腔液貯留を伴った癌の原発巣を同定するために, 4 種類の抗体を使用して免疫細胞化学染色を行った.
方法 : 体腔液細胞診断がなされ, 組織学的に原発巣が確認された 108 例の腺癌症例 (肺癌, 乳癌, 胃癌, 膵癌, 大腸癌, 卵巣癌) の細胞診標本に対し, 細胞転写法を用いて CK7, CK20, Napsin A, Villin による免疫染色を行い, その結果を retrospective study により検討した.
成績 : 膵癌では 80% (8 例/10 例) が CK7 (+) CK20 (+) となり, すべての乳癌 (15 例/15 例) で CK7 (+) CK20 (−) となった. 肺癌 (20 例/21 例) と卵巣癌 (18 例/19 例) は, どちらも 95%で CK7 (+) CK20 (−) であったが, 胃癌では 80% (24 例/30 例) が CK7 (+) CK20 (+), CK7 (+) CK20 (−) となり, 大腸癌では 77% (10 例/13 例) が CK7 (+) CK20 (−), CK7 (−) CK20 (+) の結果であった. 続いて Napsin A は肺癌の 71% (15 例/21 例) で陽性となったが, 陽性例全例が高分化型であり, 低分化型 6 例はすべて陰性となった. また Napsin A は胃癌, 卵巣癌においても 7% (2 例/30 例), 16% (3 例/19 例) が陽性となった. さらに Villin はすべての大腸癌 (13 例/13 例) と, 胃癌の 77% (23 例/30 例) で陽性となったが, 卵巣癌でも 16% (3 例/19 例) で陽性となった.
結論 : 体腔液細胞診断による腺癌症例の原発巣同定に, 4 種類の抗体 (CK7, CK20, Napsin A, Villin) を使用した免疫細胞化学染色が有用であった.

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© 2011 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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