背景 : 細胞診検査で細胞異型が高度でありながら構造異型に乏しかったため, 診断に苦慮した子宮体癌の症例を経験したので報告する.
症例 : 患者は 65 歳, 2 経産, 閉経 50 歳. 主訴は不正出血で, 内膜の肥厚と細胞診で異型を示す内膜細胞が認められたため当科に紹介された. 経腟エコーで内膜ポリープが疑われ, 初診時の細胞診では大型の核小体を有する細胞集塊が認められたが, 配列がシート状で構造異型に乏しく疑陽性と判定した. 3 ヵ月後の細胞診においても, 初診時と同様の核小体の目立つ異型細胞が多数認められた. 配列はシート状だがクロマチンの増量と部分的に不規則重積がみられたため腺癌を強く疑った. 腹式単純子宮全摘出術および両側付属器切除術を施行し, 子宮底部より発生するポリープ様腫瘤を認めた. 病理所見は, ポリープ様病変の一部に構造および細胞異型を伴った腺管がみられ, grade 2 の類内膜腺癌と診断した. ポリープ部分の間質に限局した浸潤と脈管侵襲も一部に認められた.
結論 : 本症例は内膜ポリープを発生母地とした子宮内膜腺癌の可能性が強く示唆された. このように構造異型は乏しいものの細胞異型が高度で, 稀な増殖形態を示す子宮内膜癌もあることを念頭におく必要がある.