日本臨床細胞学会雑誌
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51 巻 , 1 号
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原著
  • 稲山 久美子, 本田 知子, 若狭 朋子, 新宅 雅幸, 岡部 純弘
    2012 年 51 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    目的 : 細胞の回収率を向上させて胆道領域の正診率を向上させる.
    方法 : 当院で内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (endoscopic retrograde cholangiopancreatography : ERCP) が行われた 52 例について, 従来の擦過細胞診に加えて, ハンクス液を用いたブラシ洗浄液とブラシ外筒チューブ内容液から細胞を回収した. それぞれの検体について集塊数, 細胞像, さらに細胞診断における感度, 特異度を比較検討した.
    成績 : 検体不良による判定不可症例は, 擦過検体のみでは 17.6%であった. ブラシ洗浄液および外筒チューブ内容液を併用することにより, 判定不能は 2%となった. 細胞像については, ハンクス液を用いたブラシ洗浄液の細胞は細胞質の膨化を軽度認めた. 外筒チューブ内容液では細胞変性はほとんどなかった. ブラシ洗浄液, 外筒チューブ内容液では大型組織集塊が回収され, 立体的な組織構築も観察することができた. 三法を併用することにより感度は 92% (改良前 71%), 特異度 100% (改良前 70%) と改善した.
    結論 : ハンクス液を用いたブラシ洗浄液と外筒チューブ内容液から変性の少ない細胞を大量に回収することができ, 正診率が向上した.
  • 立原 素子, 神尾 淳子, 佐藤 丈晴, 室井 祥江, 柴田 眞一, 森村 豊, 石田 卓, 棟方 充
    2012 年 51 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    目的 : 集団検診 (集検) 喀痰細胞診により咽喉頭癌が発見されることがある. 今回, 集検喀痰細胞診で発見された喉頭癌と早期中心型肺癌の細胞像を比較検討した.
    方法 : 1994∼2006 年度に集検喀痰細胞診をきっかけに発見された喉頭癌 8 例と早期中心型肺癌 14 例を対象とした. 標本から高度異型扁平上皮細胞および扁平上皮癌細胞を抽出し, 細胞の染色性・大きさ・形状・光輝性の有無・細胞辺縁の性状・核数・核形・核クロマチン量を観察し両群間で統計学的に比較検討した.
    成績 : 両群ともクロマチンの増量は軽度, 核異型の弱い中小型で, 細胞質がオレンジ色細胞・イエロー色細胞が合わせて約 9 割を占めた. 喉頭癌は, 光輝性のないオレンジ色の細胞が多く, 一方, 早期中心型肺癌では, 光輝性のあるイエロー色細胞の出現が有意に多かった. ROC 曲線 (receiver operating characteristics curve) での検討では, 光輝性のないオレンジ色細胞がオレンジ色細胞全体の 84%以上を占める場合, 喉頭癌である確率は感度 100%, 特異度 100%であった.
    結論 : 喉頭癌と早期中心型肺癌では, 喀痰細胞診で異なる細胞所見を呈していた. これらの細胞像に着目することで喉頭癌の早期発見に寄与できる可能性が示唆された.
小委員会報告
  • 馬場 雅行, 池田 徳彦, 佐川 元保, 伊豫田 明, 宝来 威, 中嶋 隆太郎, 平田 哲士, 三宅 真司, 佐藤 雅美, 斎藤 泰紀, ...
    2012 年 51 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    背景 : 喀痰細胞診は肺癌検診において, 肺門部早期肺癌の発見のための唯一のスクリーニング法であるが, さまざまな問題点も存在している. このため 3 学会 (日本肺癌学会, 日本臨床細胞学会, 日本呼吸器内視鏡学会) 合同委員会において検討を重ね, アンケートを行った.
    目的 : 全国の肺門部 (早期) 肺癌の確定診断の実態を明らかにする.
    対象と方法 : 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡認定施設・関連認定施設にアンケートを送付し, 2006, 2007 年の気管支鏡検査件数, 肺癌切除例数, 新規肺門部早期癌診断例数, その発見動機, 組織型, 治療法を, さらに可能な範囲で肺門部進行扁平上皮癌数, 喀痰細胞診陽性・疑陽性による検査件数, 喀痰細胞診による末梢型肺癌例数などに関して回答を求めた.
    結果 : 504 施設にアンケートを送付し 308 施設より回答を得た. これらの施設は日本胸部外科学会全国集計の 57.1%をカバーしていた. 年間 150 例程度の肺門部早期肺癌が報告された. 報告数とカバー率から肺門部早期肺癌の全国における初回診断数は年間 154∼270 例程度と推定され, 肺門部の扁平上皮癌に関しては全国で年間約 4,000 例の存在が推定された. しかし, 早期癌の比率は肺門部扁平上皮癌全体の 10%を下回っていた. さらに, その発見率には地域差がみられた.
    考察および結論 : 肺門部肺癌に関しては, 現在診断されているよりも, さらに多くの症例で早期診断の機会があったと推測され, 肺癌検診のさらなる精度管理や喀痰細胞診の受診勧奨など, 検討すべき事項が存在するものと推定された.
症例
  • 卜部 理恵, 鏡 誠治, 松浦 祐介, 齋藤 研祐, 川越 俊典, 土岐 尚之, 蜂須賀 徹
    2012 年 51 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    背景 : 46,XY 性腺形成異常症 (Swyer 症候群) では未分化性腺から高率に性腺腫瘍が発生し, 組織型は多様である.
    症例 : 22 歳, 女性 (表現型). 手拳大の卵巣腫瘍を認め開腹術を施行した. 右卵巣は長径 12 cm に腫大し, 表面やや不整で褐色調を呈し, 割面は灰白色調で結節状凹凸を示す弾性硬の充実性部分と出血壊死の目立つ部分から構成されていた. なお, 左卵巣は痕跡的であった. 病理組織検査で右卵巣腫瘍は混合型悪性胚細胞腫瘍 (ディスジャーミノーマ+絨毛癌) と診断され, 左卵巣に性腺芽腫を認めた. 腫瘍割面の捺印細胞診では肉眼的に異なる部分からそれぞれ特徴的で異なった細胞像が観察されディスジャーミノーマと絨毛癌が推定された.
    結論 : 肉眼的に異なる部分からそれぞれ腫瘍割面捺印細胞診を採取することにより, 混合型悪性胚細胞腫瘍 (ディスジャーミノーマ+絨毛癌) の特徴的で異なった細胞像を得ることができた.
  • 大森 真紀子, 端 晶彦, 深澤 宏子, 弓納持 勉, 中澤 匡男, 加藤 良平, 平田 修司
    2012 年 51 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    背景 : 細胞診検査で細胞異型が高度でありながら構造異型に乏しかったため, 診断に苦慮した子宮体癌の症例を経験したので報告する.
    症例 : 患者は 65 歳, 2 経産, 閉経 50 歳. 主訴は不正出血で, 内膜の肥厚と細胞診で異型を示す内膜細胞が認められたため当科に紹介された. 経腟エコーで内膜ポリープが疑われ, 初診時の細胞診では大型の核小体を有する細胞集塊が認められたが, 配列がシート状で構造異型に乏しく疑陽性と判定した. 3 ヵ月後の細胞診においても, 初診時と同様の核小体の目立つ異型細胞が多数認められた. 配列はシート状だがクロマチンの増量と部分的に不規則重積がみられたため腺癌を強く疑った. 腹式単純子宮全摘出術および両側付属器切除術を施行し, 子宮底部より発生するポリープ様腫瘤を認めた. 病理所見は, ポリープ様病変の一部に構造および細胞異型を伴った腺管がみられ, grade 2 の類内膜腺癌と診断した. ポリープ部分の間質に限局した浸潤と脈管侵襲も一部に認められた.
    結論 : 本症例は内膜ポリープを発生母地とした子宮内膜腺癌の可能性が強く示唆された. このように構造異型は乏しいものの細胞異型が高度で, 稀な増殖形態を示す子宮内膜癌もあることを念頭におく必要がある.
  • 甲斐 敬太, 山崎 文朗, 田渕 正延, 増田 正憲, 永石 信二, 尾形 正也, 武藤 文博, 徳永 藏
    2012 年 51 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    背景 : 通常, 乳腺の小葉癌は E-cadherin の細胞膜での発現が欠失するが, 乳管癌でも E-cadherin の発現が消失ないしは減弱する例が存在する. 今回, われわれは E-cadherin 発現が減弱した乳管癌と思われる乳腺の浸潤癌を経験した.
    症例 : 60 歳, 女性. 右乳房のしこりを主訴に受診. 精査で乳癌が疑われた. 穿刺吸引細胞診では, 腫瘍細胞の線状配列や数珠状配列, 細胞質内小腺腔といった小葉癌に特徴的な所見がみられたが, 核は大型で異型が強く, 核所見が小葉癌としては非定型的であった. 組織学的には, 間質浸潤部で腫瘍細胞は個々ばらばら, あるいは線状配列を呈しながら増生しており, 浸潤性小葉癌の組織像に酷似していた. E-cadherin は細胞膜には陰性であったが, 核やゴルジ野と思われる部位に染色を認め, 小葉癌のほとんどで陽性と報告される CK34βE12 は陰性であった. 免疫染色の結果および細胞診の所見から, E-Cadherin 発現減弱を伴った乳管癌の可能性が高いと考えた.
    結論 : 自験例のような症例の分類には, まだまだ議論の余地があるが, 細胞診の所見は腫瘍本態の理解に有用であった.
特集 <ベセスダシステム時代の子宮頸部組織診>
  • 長坂 徹郎, 片渕 秀隆
    2012 年 51 巻 1 号 p. 38
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    子宮頸部細胞診においてベセスダシステムが本格的に導入されようとしている現在, 頸部組織診もそれにタイアップして変革していかなければならないと考えられます. 細胞診, 組織診は車の両輪のように互いにその長所を伸ばし, 欠点を補いながら進歩すべきものと考えます.
    本企画は, 第 51 回日本臨床細胞学会総会 (平成 22 年 5 月 29 日∼5 月 31 日, 坂本穆彦会長) で日本臨床細胞学会と日本婦人科病理学会との合同企画として行われたシンポジウム「ベセスダシステム時代の子宮頸部組診」で講演していただいた先生方に当日の発表内容を誌面上で解説していただいたものです. 本邦を代表する婦人科病理の専門医および産婦人科医の方々に, 子宮頸部組織診断の現状における問題点とベセスダシステムの導入にあたって留意すべきポイントを解説していただきました. 実際のシンポジウムでも活発な議論が交わされた企画であり, 学会誌の読者の方々にも興味を持っていただける内容である思います. 日常の診断業務の一助となれば幸いです.
  • 本山 悌一
    2012 年 51 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    ベセスダシステムの精神の最も重要なところは, 不適正な標本で診断はしないということである. この精神は組織診においても当てはまる. 診断における精度管理の第一歩は, 細胞診においても組織診においても検体の適正・不適正の評価から始まる. その具体的意義を示す.
  • 清川 貴子
    2012 年 51 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    ベセスダシステムには, 特定の前癌病変を指すのではなく癌へのリスクの高さを示す項目が設けられている. 異型扁平上皮 (atypical squamous cells : ASC) と異型腺細胞 (atypical glandular cells : AGC) がそれにあたる.
    ASC は, 意義不明な異型扁平上皮細胞 (atypical squamous cells of uncertain significance : ASC-US) と高度扁平上皮を疑う異型扁平上皮 ASC-H とに分けられる. ASC 症例のなかには, その後の組織診で低異型扁平上皮内腫瘍 (low-grade squamous intraepithelial lesion : LSIL) ばかりではなく, 高異型扁平上皮内腫瘍 (HSIL : CIN 2, 3) と診断されるものもある. その頻度やハイリスク HPV 陽性率は ASC-US に比して ASC-H で高いが, 年齢による差もある. 閉経後の ASC-H 患者は, その後の組織診で LSIL ないし良性変化と診断されることが多い. ASC と判定されうる良性変化には, 炎症による反応性異型, 未熟扁平上皮化生, 萎縮, 移行上皮化生がある.
    AGC 症例では, 10∼40%に組織学的に高異型病変が発見され, その多くは扁平上皮病変 (CIN 2, 3) であるが, 腺癌, 上皮内腺癌, 良性内頸部腺病変と診断される例もある. 後者には, 反応性異型, 卵管上皮化生, 子宮内膜症, 頸管ポリープ, 内頸腺過形成, アリアス・ステラ反応がある.
  • 九島 巳樹, 津田 祥子, 森下 朱美, 福田 ミヨ子, 秋田 英貴, 市原 三義, 森岡 幹
    2012 年 51 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    子宮頸部細胞診におけるコイロサイトーシスの意義や組織診との整合性について調べるとともに, 今後の細胞診における取扱い方などを再検討した.
    昭和大学病院において, 子宮頸部細胞診で軽度扁平上皮内病変 (low grade squamous intraepithelial lesion 以下 LSIL) と診断された標本を再鏡検し, コイロサイトの出現頻度, 鑑別診断などについて調べた. 次に組織診についても子宮頸部生検において軽度異形成であった症例について, 同様にコイロサイトーシスの頻度, 鑑別診断について検討した.
    その結果, 軽度扁平上皮内病変の細胞診では 55 例中, 23 例 (42%) でコイロサイトーシスがみられた. 軽度異形成とされた子宮頸部生検標本上では 29 例中, 19 例 (65.5%) にコイロサイトーシスがみられた. さらに鑑別診断が必要な疾患について実例を示した.
    コイロサイトーシスは軽度扁平上皮内病変を診断するために, 細胞診と組織診の両方で重要な細胞所見であり, 今後もベセスダ・システムにそった細胞診や取扱い規約に準じた組織診断を確実に行うにあたって有用な所見と考えられる.
  • 手島 伸一, 介川 雅之, 小保方 和彦, 高平 雅和, 千野 秀教
    2012 年 51 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    目的 : 現行の子宮頸癌取扱い規約, 第 2 版 (以下, 規約) の問題点を病理学的見地から取り上げ, 新規約への提言を行う.
    背景 : 規約は, 頸癌の病理診断・治療に大きな役割を果たしてきた. しかし近年, 頸癌のほぼすべてがハイリスク HPV 感染に由来することが認められ, また, わが国においても細胞診のパパニコロウ分類からベセスダシステムへの新時代が訪れて, 病理学的見地からの新たな対応が望まれている. 扁平上皮系の腫瘍性病変 (前癌病変) についてベセスダシステムでは扁平上皮内病変 (squamous intraepithelial lesion ; SIL) 分類, すなわち軽度および高度の扁平上皮内病変 (low-grade squamous intraepithelial lesion ; LSIL および high-grade squamous intraepithelial lesion ; HSIL) の 2 段階分類を用いているが, 新規約で使用すべき組織学的分類について, 従来の異形成/上皮内癌分類, WHO の子宮頸部上皮内腫瘍 (cervical intraepithelial neoplasia ; CIN) 分類, および SIL 分類の 3 者について比較検討した. 腺性の病変については, 規約で用いられている腺異形成についての妥当性を検討した. さらに, 上皮内腺癌からの腺癌上皮の間質への芽出を微小浸潤腺癌の定義としていることの問題点を示した.
    結論 : 新規約での扁平上皮系の上皮内病変の分類は CIN 分類を主体にすることが望ましい. 腺異形成の組織学的な裏付けを明確にする必要がある. 微小腺癌の組織学的な定義をより客観性のあるものにするよう提案したい.
  • 伊藤 潔, 及川 洋恵, 小澤 信義, 田勢 亨, 新倉 仁, 岡本 聡, 秀城 浩司, 金野 多江子, 笹野 公伸, 八重樫 伸生
    2012 年 51 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
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    平成 21 年度から「ベセスダシステム 2001 準拠子宮頸部細胞診報告様式」が導入された. 新様式導入に関連する治療選択上の注意点をアメリカと日本の主要なガイドラインを参考に検討した. 運用にあたっては以下の点に留意する必要がある.
    1. 検体の適正な評価はベセスダシステムの根幹をなすものであり, そのためには採取器具の選択が重要である. 産婦人科診療ガイドラインでは「子宮頸部の細胞採取はヘラもしくはブラシで行う」とされている.
    2. ベセスダシステムでは腺系病変への視点が取り入れられている. 特に異型腺細胞 (atypical glandular cells : AGC) は新しい概念であり, 注意する必要がある.
    3. CIN2 の管理・治療方針は, 治療かフォローか, アメリカと日本のガイドラインでは見解が分かれる. 産婦人科診療ガイドラインでは, CIN2 の管理方針に関し, 厳重なフォローをする, としている. ただし, フォローが困難な症例などでは選択的に治療することができることも記載されている.
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