日本臨床細胞学会雑誌
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症例
細胞診で推定診断しえた精巣上体乳頭状嚢胞腺腫の 1 例
村田 行則荒川 文子田島 秀昭石井 幸雄石田 剛
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2012 年 51 巻 5 号 p. 364-368

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抄録

背景 : 精巣上体乳頭状嚢胞腺腫は精巣上体に発生するまれな良性腫瘍で, 細胞学的な報告はほとんどない. 今回われわれは本腫瘍の 1 例を経験したので, その細胞像と組織像について報告する.
症例 : 68 歳, 男性. 約 1 年前より陰嚢腫大を自覚. 左精巣部に石灰化を伴う多胞性腫瘍を認め, 精巣原発の奇形腫を疑い左高位精巣摘除術施行. 切除検体の腫瘍擦過細胞診では, 赤血球と泡沫細胞を背景に平面的ないし軽度重積性を示す結合性の強い上皮細胞集塊を認めた. ライトグリーンに淡染する淡明な細胞質と円形∼卵円形の小型の核を有する N/C 比の低い腫瘍細胞で, クロマチンは微細顆粒状, 小∼大型の核小体を有していた. 一部の細胞には, 核溝や核内細胞質封入体が認められた. また, 細胞質は PAS 反応陽性で, グリコーゲンを豊富に有していた. 組織学的には, 精巣上体乳頭状嚢胞腺腫と診断された.
結論 : 本例にみられた細胞学的所見に, 腫瘍の発生部位, 臨床情報を加味することで, 精巣上体乳頭状嚢胞腺腫は細胞学的に推定診断が可能であると考えられる.

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© 2012 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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