日本臨床細胞学会雑誌
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症例
早期診断に細胞診が有用であった微小浸潤子宮頸部明細胞腺癌の 1 例
紺谷 佳代田中 浩彦鳥谷部 邦明岩見 州一郎谷口 晴記
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2013 年 52 巻 6 号 p. 557-561

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抄録

背景 : 子宮頸部細胞診にて癌を疑い組織診で異常所見が得られない場合, その判断と対応に苦慮する. 今回われわれは子宮頸部細胞診にて腺癌 (明細胞腺癌) を疑い精査したが, 頸部組織診上異常はなく子宮全摘標本にて確定診断された症例を経験した.
症例 : 69 歳, 女性. 子宮内膜細胞診異常にて近医より紹介された. 繰り返す子宮頸部細胞診で腺癌を考える異型細胞を認めた. 子宮内膜および頸管掻爬では組織学的に悪性所見は確認できず, 画像上も明らかな腫瘤像を認めなかったが, その後も繰り返し細胞診で腺癌を考える像を認めたため, 子宮および卵巣の悪性腫瘍の可能性を考慮し, 腹式単純子宮全摘術および両側付属器切除術を施行した. 摘出子宮において, 子宮頸部に微小浸潤子宮頸部明細胞腺癌を認め, IA1 期に相当した. Human papillomavirus (HPV) タイピング解析では, 解析したすべての型において陰性であった.
結論 : 子宮頸部腺上皮の初期病変の診断においては, 狙い組織診より細胞診のほうが有用なことがある. また HPV 検査は腺癌においてもスクリーニングとして有用であるが, 検査法によっては検出できない例もあることに留意すべきである.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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