2014 年 53 巻 1 号 p. 19-22
背景 : 悪性リンパ腫の診断・治療において flow cytometry (FCM) による免疫表現型の検索や染色体分析を行うことが推奨されるが, 気管支鏡下で採取された肺の生検組織はホルマリンで固定された状態で提出されるため, 生検体の確保は困難である. 今回, 経気管支肺生検の迅速細胞診検査で悪性リンパ腫を推測し, FCM のための組織の追加採取が可能であった肺 MALT リンパ腫の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 62 歳, 男性. 近医で胸部異常陰影を指摘され当院受診となり, 胸部 C T で右上葉肺門部に境界明瞭な軟部腫瘤, 両肺の末梢肺野に多発結節影が認められ肺癌が疑われた. 気管支鏡下肺生検時の迅速細胞診検査で多数の中型リンパ球大の異型細胞が散在性に認められた. 悪性リンパ腫が推測されたため, FCM のための組織を追加採取する提案を行った.
結論 : 気管支鏡などの組織採取時に迅速細胞診検査を併用することで, 悪性リンパ腫が疑われた場合に FCM などに用いる組織の追加採取が可能となり迅速かつ効率的に診断が行えるものと思われた.