日本臨床細胞学会雑誌
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症例
乳腺原発血管肉腫の 1 例
吉本 尚子今井 律子佐竹 立成溝口 良順
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2014 年 53 巻 1 号 p. 47-50

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抄録

背景 : 乳腺原発の血管肉腫は非常にまれな疾患であるが, 予後が不良であるだけに, 早期発見が望まれる. 今回穿刺吸引細胞診標本を観察する機会を得たが, 吸引された材料は少ないものの, 注目すべき所見が認められたので報告する.
症例 : 70 歳代, 女性. 乳がん検診マンモグラフィーにて左右乳房に異常所見を認め, 精査のため, 穿刺細胞診が施行された. 非常に強い出血を背景にして, 弱拡大像で大小の空胞を含む組織片が少数認められた. 強拡大では, 空胞の縁に核クロマチンが濃染する紡錘形, 類円形の核が認められた. また核異型を伴う細胞が対細胞として少数認められた. 細胞転写法により細胞診標本からセルブロック標本を作製し CD34 の免疫染色を施したところ, 対細胞は陽性を示した. 乳房部分切除標本で血管肉腫と診断された.
結論 : 血管肉腫の穿刺細胞診標本には, 強い出血が認められること, 細血管と考えられる空胞構造や上皮細胞に類似した異型細胞が存在することなどを認識しておくことが必要と考えられた.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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