日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
反応性中皮細胞との鑑別に苦慮した扁平上皮への分化を伴う子宮体部類内膜腺癌の腹腔洗浄細胞診の 1 例
高瀬 頼妃呼河原 明彦山口 知彦安倍 秀幸多比良 朋希福満 千容真田 咲子鹿毛 政義
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 53 巻 2 号 p. 109-113

詳細
抄録

背景 : 腹腔細胞診において, 子宮体部由来類内膜腺癌の出現数は, 漿液性腺癌と比較して少ない. 今回われわれは腹腔洗浄液中に出現した類内膜腺癌の細胞判定に苦慮した 1 例を経験したので報告する.
症例 : 患者は 50 歳代, 女性. 病理組織生検で類内膜腺癌と診断され, 当院で単純子宮全摘術, 両側付属器切除術, 骨盤内リンパ節廓清術, 傍大動脈リンパ節生検術および腹腔洗浄細胞診が施行された. 細胞診標本で, 明瞭な核小体を有する腫瘍細胞が小集塊あるいは孤在性に出現し, それらの細胞は正常中皮細胞よりも大型であった. また, 腫瘍細胞は比較的豊富な細胞質や細胞間に反応性中皮細胞にみられるようなウインドウ様の所見を有していた. 腫瘍細胞の核異型は軽度だが, 悪性を疑う細胞像であり, 反応性中皮細胞との鑑別のために免疫染色を施行した. 腫瘍細胞は EMA と ERA (MOC-31) に陽性, カルレチニン陰性で, 腺癌と判定された. 摘出標本では, 腫瘍細胞は壊死を伴いながら充実性に増殖し, 個々の腫瘍細胞に多形性や核分裂像を認めた. また, 腫瘍細胞は部分的に扁平上皮への分化を伴っていた. これらの所見より, 扁平上皮への分化を伴う類内膜腺癌 G3 と診断した.
結論 : 体腔液細胞診で, 核異型の弱い癌細胞が偽ウインドウ所見を呈した場合, 反応性中皮細胞との鑑別が困難である. このような症例では, 過小評価を避けるために免疫染色を使用すべきである.

著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top