日本臨床細胞学会雑誌
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原著
胎児腹水細胞診の細胞像の検討と鑑別診断の有用性
高橋 顕雅石田 光明山中 章義天野 創郭 翔志脇ノ上 史朗中川 哲也岡部 英俊高橋 健太郎
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2014 年 53 巻 3 号 p. 169-175

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抄録

目的 : 超音波機器の進歩に伴い, 胎児腹水の原因の診断精度は増しているが, 確定診断にいたらない例もある. より確実な診断手法が必要であり, 胎児腹水細胞診が早期診断に有用かを検討した.
方法 : 2010 年 4 月∼2013 年 9 月に胎児腹水で当院に紹介され, 胎児腹水細胞診を施行した 8 例について, 臨床像, 細胞像の検討, および最終診断との合致について検討した.
成績 : 細胞診を施行した 8 例のうち, 1 例は滲出性腹水であり, 2 例が胎便性腹膜炎, 5 例が乳び腹水であった. 滲出性腹水は細胞成分に乏しく, 胎便性腹膜炎は扁平上皮細胞の集塊とともに好中球, 組織球がリンパ球と同程度に存在した. 乳び腹水は, 一部扁平上皮細胞を認めるものもあったが, 孤発性であり, 白血球分画において, リンパ球が 90%以上認められた. 細胞診の結果が最終診断とすべて合致した.
結論 : 超音波断層法に頼った診断より, 胎児腹水細胞診を施行したほうが, 確実に診断できることから, 侵襲的な検査ではあるが, 診断に迷ったときは積極的に腹水細胞診を施行するべきと考えられた.

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