抄録
目的 : われわれは抗 HNF4α抗体を用いた免疫染色が体腔液細胞診標本中の悪性細胞の同定および原発巣推定に役立つか否かについて検討した.
方法 : 臨床病理学的に原発巣が判明している腹水 82 例 (消化器由来腺癌 43 例, 卵巣癌 32 例, 子宮内膜癌 7 例) と胸水 38 例 (肺癌 14 例, 消化器由来腺癌 11 例, 卵巣癌 3 例, 腎癌 2 例, 悪性中皮腫 6 例, 悪性リンパ腫 2 例) を対象とし, 抗 HNF4α抗体を用いた免疫染色を行った.
成績 : 腹水・胸水の消化器由来腺癌, 腹水の卵巣粘液性腺癌, 胸水の腎癌は全例陽性であった. 腹水の子宮内膜癌の 7 例中 1 例が陽性であったが, 胸水の肺癌も含めその他の症例はすべて陰性であった. 標本中にみられる良性細胞には陽性細胞は確認されなかった.
結論 : 体腔液細胞診標本において, 消化器由来腺癌, 腎癌, 卵巣粘液性腺癌は HNF4α陽性であった. 消化器由来腺癌が出現しやすい腹水では悪性細胞と良性細胞の鑑別に有用であった. 胸水では原発性肺癌と転移性癌との鑑別に有効であった. 体腔液の細胞診断は, 細胞形態, 臨床所見および従来有用とされている抗体を踏まえ, 抗 HNF4αを併用することにより原発巣の推定の一助となると思われた.