抄録
背景 : 子宮内避妊器具 (intra uterine contraceptive device : IUD) 装着の合併症の一つとして骨盤腹膜炎があげられる. この中で, 放線菌症はまれであり, 悪性腫瘍との鑑別が難しく, 摘出検体の病理組織検査で診断されることが多い. 治療前の IUD の捺印細胞診を後方視的に再検鏡した結果, 診断に導く所見があった 1 例を経験したので報告する.
症例 : 46 歳, 2 経妊 2 経産. 10 年前に IUD を装着し未交換であった. 下腹部痛を主訴に前医を受診. IUD を抜去し抗生剤内服で軽快したが, 約 1 ヵ月後に再燃した. 卵巣・卵管膿瘍の診断で治療されたが症状改善せず, 当院へ紹介となった. 入院後抗生剤の変更により症状や血液学的所見は改善したが, 卵巣・卵管膿瘍と考えられた腫瘤の大きさに変化がなく, 開腹し, 単純子宮全摘出術, 左付属器摘出術, 癒着剥離術を施行した. 摘出した検体で左付属器は卵管膿瘤を形成し左卵巣と一塊となっていた. 組織学的に, 左卵管内には膿瘍とともに放線菌が確認された. 診断確定後, IUD 抜去時に施行された捺印細胞診を再検討したところ, 放線菌と考えられる菌塊を多数認めた.
結論 : IUD 装着者に腹膜炎症状を認めた際には, その原因として放線菌症も鑑別にあげる必要があると考える. 放線菌症の診断には, 抜去した IUD の捺印細胞診が有用である可能性が示唆された.