目的 : 国際基準になりつつある甲状腺ベセスダシステム (TBS) 導入に向け, 「良性」に焦点を当て, 取扱い規約との比較, および本邦における妥当性を検討した.
方法 : 2011 年 1 月∼12 月の 1 年間に施行された甲状腺細胞診 10333 結節から, 取扱い規約または TBS で「良性」の結節を抽出し, 良性の頻度, 再検率, 切除率, 悪性の危険度等を検討した.
成績 : 良性の頻度は取扱い規約 73.0%, TBS 67.8%で, その差は, 取扱い規約「良性」, TBS「不適正」に分類される嚢胞液結節であった. 再検率は取扱い規約 1.6%, TBS 1.6%で, 最も多い再検理由は超音波で「鑑別困難」「悪性の疑い」であった. 切除率は取扱い規約, TBS, 嚢胞液結節おのおの 8.1%, 8.2%, 6.5%で, 全良性結節中の悪性の危険度は 1.2%, 1.1%, 1.7%であった.
結論 : 取扱い規約と TBS で「良性」の再検率・切除率・悪性の危険度に差はなく, TBS にて推奨されている値とも合致しており, TBS 導入による混乱は少ないと推測された. 嚢胞液結節の悪性の危険度が特に高くはない点から, 嚢胞液結節は「良性」と同様に経過観察を推奨したい.
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