背景 : 原発性卵管癌は, 婦人科領域の悪性腫瘍のなかではまれな疾患とされている. 卵管結紮後 30 年以上経過し, 術前に頸部および内膜細胞診でのみ異常を指摘しえた非浸潤性両側卵管癌を経験したので報告する.
症例 : 57 歳, 2 経妊 2 経産, 閉経 49 歳. 30 歳時両側卵管結紮術施行. 少量の不正出血を主訴に受診し, 頸部細胞診, 内膜細胞診ともに陽性, 腺癌の診断であった. 内膜全面掻爬による組織診を行ったが, 悪性所見を認めず, 画像上も子宮や両側付属器など骨盤内に異常を指摘されなかった. しかし, 子宮や卵巣, 卵管における小さな腫瘍の存在を否定できないため, インフォームドコンセントを得たうえで, 単純子宮全摘出術と両側付属器切除術を行ったところ, 子宮と卵巣には腫瘍を認めなかったが, 両側卵管の結紮部内に非浸潤性漿液性腺癌を認めた.
結論 : 本例は, 卵管結紮部にも腺癌が発生しうること, 結紮部に再疎通が起こりうること, そして腫瘍細胞間が分離しやすい漿液性腺癌にあっては, 腫瘍細胞がそこを通過しうることを示している.