日本臨床細胞学会雑誌
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症例
卵巣移行上皮腫瘍の細胞学的検討
大森 真紀子近藤 哲夫端 晶彦石井 喜雄中澤 久美子深澤 宏子加藤 良平平田 修司
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2014 年 53 巻 4 号 p. 323-328

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抄録

背景 : 卵巣原発の移行上皮腫瘍はまれな腫瘍であるため, その細胞学的所見に関する報告は少ない. 本研究では卵巣腫瘍における術中捺印細胞診の有用性を検証するため, 卵巣移行上皮腫瘍の細胞学的特徴を分析した.
症例 : 2004 年 7 月∼2011 年 10 月に当院で手術を行った卵巣移行上皮腫瘍は良性ブレンナー腫瘍 11 例, 悪性ブレンナー腫瘍 2 例, 移行上皮癌 1 例で, このうち捺印細胞診を行った 5 例の細胞所見について検討した. 良性ブレンナー腫瘍では紡錘形の裸核状間質細胞が多数出現し, 腫瘍細胞は境界明瞭で胞体は明るく, 核に異型はみられず, 核溝が高頻度にみられた. 悪性ブレンナー腫瘍では間質細胞は少数で, 良性∼悪性の多彩な細胞像が観察され, 移行上皮癌では高度の核異型を示す単一細胞の増生が特徴的で, どちらも核溝を有する細胞は少数であった. 良性, 悪性ブレンナー腫瘍, 移行上皮癌では間質細胞と腫瘍細胞の出現割合, 核異型, 核溝を有する細胞数に明らかな違いがみられた.
結論 : 卵巣移行上皮腫瘍の捺印細胞診では, それぞれ特徴的な違いがみられた. 卵巣腫瘍の捺印細胞診は術中迅速診断の精度を向上させる有用な方法と考える.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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