日本臨床細胞学会雑誌
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症例
膀胱尿路上皮癌の経過観察 10 年後に発生した尿膜管癌の 1 例
奥沢 悦子熊谷 幸江須藤 安史矢嶋 信久松田 雪香曾田 剛史板橋 智映子方山 揚誠
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2014 年 53 巻 6 号 p. 467-472

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抄録

背景 : 尿膜管癌は遺残した尿膜管より発生する極めてまれな疾患である. 今回われわれは膀胱癌の経過観察 10 年後に尿膜管癌を発症した 1 例を経験した.
症例 : 70 歳, 男性. 膀胱癌の既往があり, 経過観察 10 年後に肉眼的血尿を主訴に受診した. CT で膀胱頂部から腹腔内に腫瘤を認め尿膜管癌と診断した. 自排尿の尿細胞診では出血性背景に柵状配列を呈し, 高度の重積性をみる腫瘍細胞が大型集塊で認められた. また N/C 比がやや高く, 結合性の弱い小集塊も混在し, 一部には細胞質内小腺腔 (ICL) がみられた. 組織学的にはシート状配列と管状構造が混在した腺への分化を伴う尿路上皮癌の像であった. 部分的に微小乳頭状の増生を伴う部分と, 杯細胞型, 印環細胞型などの多彩な腫瘍像を示した.
結論 : 尿細胞診において小腺腔と柵状配列が混在した高度な重積性をみる大型樹枝状集塊の出現と ICL の出現は尿膜管癌を疑う重要な所見と考える.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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