日本臨床細胞学会雑誌
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症例
脾臓原発組織球肉腫の 1 例
西田 ゆかり畑中 一仁竹下 かおり舞木 公子二反田 隆夫田中 和彦義岡 孝子北島 信一
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2014 年 53 巻 6 号 p. 473-476

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抄録

背景 : 組織球肉腫 (histiocytic sarcoma, 以下 HS) は成人のリンパ節, 皮膚, 消化管に好発するまれな腫瘍である. 極めてまれな脾臓原発 HS を経験したので, その捺印細胞像を含めて報告する.
症例 : 60 歳代, 女性. 検診で径 5 cm の脾臓内腫瘤を指摘された. 脾臓原発悪性リンパ腫が疑われ, 確定診断と治療目的で脾臓摘出術が施行された. 割面では径 4.5 cm の境界明瞭な黒褐色調の変色域があり, 捺印細胞診ではリンパ球および好中球を背景に, 多形性の豊富な胞体を有する細胞が散在性ないし小集塊状に認められ, 空胞を伴っていた. 核は大型で, クロマチンの不均等分布がみられた. また, 血球貪食像も認められた. 組織標本では泡沫状の豊富な胞体を有する細胞のびまん性増殖を認め, 核異型および核分裂像を伴っていた. また, 多核細胞や血球貪食像も認められた. 免疫染色では CD68 (PGM1), CD163 および lysozyme が陽性で, 脾臓原発 HS と診断した.
結論 : 形態からの HS の診断は困難であり, 臨床情報や免疫染色を加えた総合的な評価が必要である. なお, 脾臓原発例を含めて HS の細胞像の報告は極めて少なく, 貴重な症例と考えられた.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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