日本臨床細胞学会雑誌
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症例
子宮内膜細胞診に悪性細胞が出現した肺腺癌の 1 例
岡本 啓大下 孝史松本 真平花岡 香織池田 征幸熊澤 鈴子國安 弘基
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2014 年 53 巻 6 号 p. 477-481

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抄録
背景 : 子宮頸部, 内膜細胞診で子宮外臓器の悪性細胞が出現することはまれであり, そのなかでも肺癌由来の報告は少ない.
症例 : 70 歳代, 女性. 肺癌に対して再燃化学療法を施行中, 偶然に受けた子宮がん検診で other malig. であったため当科を紹介受診した. 当科では子宮内膜細胞診で腺癌細胞を認めるも, 経腟超音波検査, magnetic resonance imaging (MRI), 子宮鏡検査で腫瘤形成がなく, 子宮内膜組織診でも異常を認めなかった. そこで子宮内膜細胞診検体を用いてセルブロックを作成し, thyroid transcription factor-1 (TTF-1), surfactant proteins A (SP-A), estrogen receptor (ER), progesterone receptor (PgR) の免疫染色を行った. その結果, TTF-1, SP-A は腺癌細胞で陽性, 子宮内膜腺上皮では陰性であった. 一方で ER は腺癌細胞で陰性, 子宮内膜上皮では陽性であり, PgR は両者で陰性であった. 以上より, 腺癌細胞は肺腺癌由来であると診断した.
結論 : 子宮の細胞診で子宮外臓器由来が疑われる悪性細胞を認めた際には, 各臓器癌における特徴的な細胞診所見を熟知しておくことは原発性または転移性癌の鑑別診断に寄与するが, 一方で組織診断が得られない場合にはセルブロックを作成し, 各種免疫染色を積極的に利用すべきであると考えられた.
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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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