日本臨床細胞学会雑誌
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症例
乳頭癌様の異型細胞を認めた甲状腺腺腫様結節の 1 例
成富 真理畠 榮物部 泰昌高須賀 博久日野 寛子
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2015 年 54 巻 2 号 p. 153-157

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抄録

背景 : 甲状腺穿刺吸引細胞診で, 大型細胞, 核形不整, 核内細胞質封入体がみられ, 乳頭癌との鑑別に苦慮した腺腫様結節の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 60 歳代, 男性. 検診で左甲状腺腫瘤を指摘され当院受診. 超音波で左葉上極に分葉状腫瘤を認め, 乳頭癌あるいは腺腫様甲状腺腫を疑い, 穿刺吸引細胞診が施行された. 組織球を背景に, 濾胞上皮細胞が大~小集塊でシート状に出現していた. 一部の集塊では, 大型細胞や核の大小不同, 核形不整が認められた. また, 核内細胞質封入体や核溝もみられ, 乳頭癌の疑いとした. 後日, 左甲状腺切除術が施行された. 腫瘤は甲状腺左葉上極に認め, 割面は線維性被膜に覆われた境界明瞭な淡褐色調で, 7×5 mm 大の小結節病変であった. 結節は大小の濾胞の密な増殖よりなり, 大部分は異型に乏しく, ところどころで大型核や核内細胞質封入体, 核溝を有する異型な濾胞上皮が存在した. 異型を有する腺腫様結節と診断した.
結論 : 腺腫様結節でも, 本例のように大型細胞や核形不整, 核内細胞質封入体などの異型がみられ, 乳頭癌と鑑別に苦慮する症例がある. まれではあるが, 腺腫様結節と乳頭癌が合併することもあり, 慎重な細胞診断が必要と考えられた.

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