日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腺房細胞癌との鑑別に苦慮した mammary analogue secretory carcinoma の 1 例
志賀 有紗有馬 信之河野 公成松本 律男山田 智子溝上 美江内田 衣里子豊住 康夫
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2015 年 54 巻 4 号 p. 258-263

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抄録

背景 : Mammary analogue secretory carcinoma of the salivary gland (MASC) は Skalova らにより最初に紹介された乳腺分泌癌と同一の遺伝子転座を示す唾液腺腫瘍である. 今回, 私どもは副耳下腺に発生した MASC の 1 例を経験し, 腺房細胞癌との細胞学的鑑別点について検討したので報告する.
症例 : 患者は 24 歳男性. 右頬部の腫脹と疼痛にて来院し, 腫瘍切除術を施行. 当初は副耳下腺原発の腺房細胞癌と診断していたが, 乳腺分泌癌との形態学的類似性から, RT-PCR 法にて ETV6-NTRK3 キメラ融合遺伝子を証明し, MASC と最終診断した. 細胞所見を再検討するに, ヘモジデリン貪食組織球が目立つ背景, シート状・濾胞状・乳頭状の細胞集塊, 軽度の細胞異型, 乏しい zymogen 顆粒は MASC も考慮すべき所見であったが, 背景に粘液が乏しく, 腺房細胞癌との細胞学的鑑別は必ずしも容易でなかった.
結論 : MASC の診断には乳腺分泌癌に類似した形態所見の拾い上げや S-100 蛋白や mammaglobin の免疫染色が有用であるが, 確定診断には融合遺伝子の証明が避けられないと思われた.

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© 2015 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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