日本臨床細胞学会雑誌
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症例
神経内分泌癌を伴う卵巣癌肉腫の 1 例
竹渕 友弥伊古田 勇人後藤 優典栗原 康哲平戸 純子小山 徹也
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2016 年 55 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

背景 : 卵巣癌肉腫と卵巣神経内分泌癌はどちらもまれな腫瘍で, 両者を合併した症例報告はほとんどみられない. 今回われわれは術中腹水細胞診で神経内分泌腫瘍と診断し, 手術検体で神経内分泌癌を伴った卵巣癌肉腫と診断された症例を経験したので報告する.
症例 : 69 歳, 女性. 右下腹部痛にて近医を受診し, 卵巣腫瘍が疑われたため当院紹介受診となった. CT で右卵巣に 98×87×87 mm 大の内部不均一, 辺縁やや不整な腫瘤を認めた. 子宮頸部液状細胞診, 子宮内膜細胞診は陰性で, 術中腹水細胞診では木目込み細工様配列や索状配列をもつ N/C 比の高い小型の異型細胞が集塊でみられ, 免疫染色では CD56, synaptophysin が陽性, chromogranin A が一部陽性で神経内分泌腫瘍が疑われた. 術後組織検体では右卵巣は癌肉腫が主体で, 腫瘍比率は肉腫成分が 90% で癌腫成分が 10% であった. 右卵管, 左卵巣, 大網結節は神経内分泌癌が主体で, 腫瘍比率は神経内分泌癌成分が 80% で肉腫成分が 20% であった. 以上の所見より神経内分泌癌を伴った癌肉腫と診断された.
結論 : 卵巣神経内分泌癌は予後不良の症例が多い. 早期の適切な治療選択のためにも, 腹水細胞診での神経内分泌癌の診断推定は意義のあるものと思われる.

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