日本臨床細胞学会雑誌
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症例
子宮内膜細胞診陽性のみを呈していたが, 急速に腹腔内進展をきたした卵巣漿液性腺癌の 1 例
宮本 雄一郎岡田 智志石川 光也池田 俊一加藤 友康隅蔵 智子吉田 正行笠松 高弘
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2016 年 55 巻 1 号 p. 52-57

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抄録

背景 : 卵巣癌の早期発見・治療は難しく, 約半数がⅢ・Ⅳ期の進行癌で発見され, なかには急速に進行するものもある. 子宮内膜細胞診のみ陽性で, 術前画像検査で病変は指摘できなかったが, 開腹手術時には広範囲な腹腔内播種をきたしていた卵巣漿液性腺癌症例を経験したので報告する.
症例 : 49 歳, 女性. 不正出血を主訴に近医受診し, 子宮内膜細胞診疑陽性のため当院へ紹介となった. 細胞診再検や, 画像検査で悪性所見なく, 定期的に経過観察していた. 1 年 6 ヵ月後, 症状はないものの, 子宮内膜細胞診が再度陽性となり当院を再診した. 子宮内膜細胞診では, 腫瘍性背景を欠き孤立散在性に腺癌細胞を認め, 漿液性腺癌が疑われた. 子宮頸部・内膜組織診で悪性所見なく, 画像検査では明らかな原発病変は指摘できなかった. 小さな子宮体癌を第一に考え手術の方針とし, 再診より 1 ヵ月後に開腹手術を施行した. 開腹時, 20 mm を超える腹腔内播種が多発した卵巣癌Ⅲc 期の状態であり, primary debulking surgery を行った. 切除標本では子宮内膜には病変を認めず, 卵巣実質内に浸潤する漿液性腺癌を認め, 右卵管には微小浸潤を伴う TIC (tubal intraepithelial carcinoma) を認めた.
結論 : 子宮内膜細胞診にて, 腫瘍性背景を欠き孤立散在性の腺癌細胞を認めた場合には, 子宮内膜由来でない腺癌細胞の可能性もあり, 腹腔内進展した進行卵巣癌も考慮した画像検査・手術準備をすべきである.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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