日本臨床細胞学会雑誌
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症例
耳下腺に発生した mammary analogue secretory carcinoma の 1 例
—形態的特徴と鑑別診断を中心に—
那須 篤子畠 榮藤田 勝山内 豊子中村 聡子田中 健大市村 浩一柳井 広之
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2016 年 55 巻 2 号 p. 112-116

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抄録

背景 : 耳下腺に発生した mammary analogue secretory carcinoma (以下 MASC) の 1 例を経験したので細胞像を中心に報告する.
症例 : 60 歳代, 男性. 左耳前部の腫脹を主訴に他院を受診. 超音波検査にて左耳下腺内に約 3 cm の腫瘍を認め, 穿刺吸引細胞診を施行, 悪性判定となり, 手術目的で当院紹介受診となった. 穿刺吸引細胞診では, 乳頭状構造を示す細胞集塊やライトグリーン淡染性で豊富な細胞質を有する細胞が疎な結合性を呈し散見された. これらの細胞の核は偏在し, 一部の細胞では細胞質内小腺腔 (intracytoplasmic lumina, 以下 ICL) を認めた. ICL や腺腔内の貯留物質は, パパニコロウ染色では淡い桃色を呈し, Hema-color®染色では, 異染性を呈した. 細胞学的には, 腺房細胞癌や低悪性度篩状囊胞腺癌, 腺癌の鑑別が困難であった.
結論 : 腺房細胞癌や低悪性度篩状囊胞腺癌, 腺癌の鑑別が困難であったが, MASC というまれな組織型と診断された. 腺房細胞癌様の細胞が認められた場合は, 鑑別診断の一つとして MASC を念頭に置くことが肝要であると考えられた.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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