背景 : 前眼房水に浸潤した節外性 NK/T 細胞リンパ腫, 鼻型 (extranodal NK/T cell lymphoma, nasal type, 以下 ENKL) の 1 例を経験したので細胞所見を中心に報告する.
症例 : 50 歳代, 男性. 発熱, 食思不振, 全身倦怠感を主訴として他院を受診. 肝生検にて, ENKL, Stage ⅣB と診断され, 当院を紹介受診. その後, 左前眼房の混濁があり, 前眼房水の細胞診が施行された. 検体量が少量なため Cyto Rich
®を用いて液状化検体細胞診 (liquid based cytology, 以下 LBC 法) で標本を作製した. 標本には長く伸びた核を有し, 核の切れ込みなどの異型を示すリンパ球様細胞が多く認められた. また細胞質の一方が突起様に伸びた hand mirror 様の形態を呈した細胞も観察された. 肝生検, 骨髄 clot section の免疫組織化学的検索で CD3ε, CD56 が陽性, ISH で EBER が陽性であり, 前眼房水検体の免疫細胞化学的検索でも同様の結果であったため ENKL の浸潤と診断した.
結論 : ENKL の細胞は細胞診形態で Hand mirror cell として出現することがある. ENKL の診断は, 免疫染色とあわせて総合的に判断することが必要であり, LBC 法はそのために有効であった.
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