日本臨床細胞学会雑誌
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特集 <ベセスダシステムを導入して(施設間の違い)―ASC-H の細胞判定と組織学的な背景―>
細胞診 ASC-H の組織学的な背景病変
—現状と問題点—
古田 玲子山田 麻里沙池畑 浩一鈴木 奈緒子古田 則行宇津木 久仁子杉山 裕子北川 知行
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2016 年 55 巻 3 号 p. 180-188

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抄録

目的 : 細胞診 ASC-H の組織学的な背景病変を挙げ, ASC-H とされる要因と問題点を明らかにし, 今後の展望を考察する.
方法 : ASC-H 例の細胞像と組織像を照合し, 組織学的背景病変ごとに細胞診で ASC-H とした理由を解析した.
成績 : ASC-H の組織学的な主な背景病変には, 1) 萎縮重層扁平上皮の異型, 2) 異型未熟 (扁平上皮) 化生, 3) CIN3 (CIS), および 4) 低分化型の腺扁平上皮癌が挙げられた. 1) と 2) は通常の CIN の段階診断に合致せず組織診断に幅が生じている病変であり, 細胞診では, 重層扁平上皮深層型相当の異型細胞である. 3) は典型的な CIN3 (CIS) の組織像であるが細胞診で孤立性細胞に異型がみられず, 細胞集塊 Cell groups (CGs) が判定の焦点となる場合である. 4) は核異型が軽微で, 壊死に乏しく pitfall に陥りやすいまれな癌である.
結論 : 細胞診で ASC-H とされている組織学的背景病変には, 組織診・細胞診ともに質的な判定基準を明確にすべき病変と, 細胞診で CGs の観察視点やまれな癌細胞の特徴を熟知すれば, HSIL (CIS) や癌判定可能な病変が含まれている.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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