日本臨床細胞学会雑誌
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原著
当院における髄液細胞診陽性症例の臨床細胞学的検討
岩本 望石田 光明籠谷 亜希子春日 希岩井 宗男林 裕司有田 奈弥恵宮平 良満九嶋 亮治
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2016 年 55 巻 5 号 p. 291-297

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抄録

目的 : 髄液細胞診は中枢神経のさまざまな病態の診断に用いられ, 特に腫瘍細胞の軟髄膜転移の検索に有用であるが, 非血液系腫瘍を含めた髄液細胞陽性症例の報告は少ない. 当院での髄液細胞診陽性症例について, 臨床細胞学的特徴について検討した.

方法 : 2010~2014 年の 5 年間の髄液細胞診検体のうち陽性症例 46 例 74 検体を再検討した. 小児 (20 歳未満) と成人 (20 歳以上) の 2 群に分け, 臨床細胞学的特徴について検討を行った.

成績 : 小児 12 例では, 髄芽腫, 退形成性上衣腫, 未分化神経外胚葉性腫瘍や胚腫などの中枢神経系腫瘍が 9 例と最も多く, 次いで急性白血病が多かった. 成人 34 例では癌腫が 44%と最多で, 肺癌の転移がその 80%を占めた. 癌腫の組織型では腺癌が 87%と最も多かった. 急性白血病と悪性リンパ腫がそれぞれ 6 例で癌腫に次いで多かった.

結論 : 髄液中にはさまざまな臓器由来の腫瘍細胞が出現し, また細胞の変性が強いことが多く, その細胞診断に苦慮することも少なくない. 今回の検討から年齢により好発する腫瘍に大きな傾向があり, 細胞形態の詳細な観察とともに, 臨床情報を加味することで, 正確な診断が可能であると考えられた.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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