2017 年 56 巻 3 号 p. 137-142
背景 : 耳下腺に発生したラブドイド細胞を主体とした筋上皮癌の 1 例を経験したので細胞所見を中心に報告する.
症例 : 60 歳代, 男性. 左耳前部腫瘤を主訴として近医を受診後, 当院を紹介受診. CT にて左耳前部に内部壊死様で辺縁不整を示す腫瘤影を認めた. 耳下腺穿刺吸引細胞診では, 壊死物質を背景にライトグリーン好性の豊富な細胞質と偏在核を有するラブドイド細胞が散在性あるいは小集塊状に出現していた. 悪性を除外しえないため, 耳下腺腫瘍摘出術ならびにリンパ節郭清術が施行された. 組織所見および免疫組織化学的所見より筋上皮癌と診断した.
結論 : 唾液腺腫瘍の細胞診において, ラブドイド細胞を認めた場合には, まれではあるが筋上皮癌も念頭におき検索する必要があると考えられた.