日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腟頸部細胞診にて見出された自由生活線虫の 1 例
増田 友紀江浦崎 政浩髙橋 年美小林 貴代田中 都子中村 恵麻生 晃亀田 典章
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2017 年 56 巻 4 号 p. 189-192

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抄録

背景 : 自然界には莫大な種類の線形動物 (線虫類) が存在し, その大半が自由生活性である. 今回われわれは腟頸部細胞診にて寄生種との鑑別を要した自由生活線虫の検出例を経験したので報告する.

症例 : 58 歳, 女性. 主訴は頻回の膀胱炎. 子宮がん検診にて採取された腟頸部スメアに虫体が見出された. 体長や内部構造の観察により寄生種は除外され, 自由生活線虫の可能性が示唆された. また, 染色処理過程での混入の可能性を排除するため, 当施設の自動染色装置および水回りを検索した結果, 線虫は見出されなかった. 細胞診と同時期に行われた血液検査では特筆すべき所見はなく, 約 1 年後の腟頸部・内膜細胞診において線虫や炎症所見は認めなかった. これより, 本例は自由生活線虫が一過性に腟に存在した所見を観察したスメアであると考えられた.

結論 : 腟頸部細胞診にて虫体を見出すことはまれであるが, 線虫の生活史や内部構造を理解し, 十分に観察を行うことにより, 寄生種と自由生活種の鑑別が可能となる.

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