日本臨床細胞学会雑誌
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症例
胆囊原発小細胞神経内分泌癌の 1 例
杉山 佳代米谷 久美子神田 真規佐々木 健司米原 修治
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2017 年 56 巻 4 号 p. 182-188

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抄録

背景 : 胆囊に発生する神経内分泌癌の発生頻度は低く, またその細胞像に関する報告はきわめて少ない. 今回, われわれは胆汁細胞診にて小細胞神経内分泌癌と診断しえた 1 例を経験したので, 文献的考察も含めて報告する.

症例 : 80 歳代, 女性. 悪性胆道狭窄による閉塞性黄疸の疑いで内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) が行われ, 採取された胆汁細胞診で小細胞神経内分泌癌と診断された. 細胞像は腫瘍性背景に小集塊状, 索状配列を示す N/C 比の大きい小型異型細胞を認め, 他組織に発生する小細胞癌の像に一致した. 鑑別診断として腺癌, 悪性リンパ腫が挙がるが, 細胞配列や細胞の結合性より鑑別可能であった. 入院 7 日目に死亡し, 病理解剖が行われた. 全身検索の末, 胆囊原発小細胞神経内分泌癌と診断された.

結論 : 胆汁中に出現する悪性細胞は腺癌が圧倒的に多く, 腺癌と他組織像の混在も視野に入れた注意深いスクリーニングが重要である. また胆汁では細胞変性を起こしやすく, 検体の取り扱いにも注意が必要である. 本例は予後不良であり, 早期診断や早期治療が必要である. そのため細胞診による組織型推定は重要と考える.

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