2018 年 57 巻 1 号 p. 19-34
子宮頸部細胞診による子宮頸がん検診は, 老人保健法により 1983 年より全国で開始され, 2002 年より現在の健康増進法に引き継がれている. 2012 年に策定されたがん対策推進基本計画では, 「5 年以内に受診率 50%以上」 の目標値が揚げられているが, 子宮頸がん検診の受診率は, 2013 年が 32.7%で, 欧米諸国の受診率 80%以上と比較すると極端に低いのが問題である. 検診受診率 50%以上の目標達成を考えると, 今後子宮頸部細胞診検体数が増加することは確実で, 細胞診断に携る細胞検査士や細胞診専門医の大幅な負担増加が予想される. その結果, 偽陰性すなわち, 見落とし例の増加が懸念される.
日本臨床細胞学会では, 偽陰性を少なくするため, 細胞診断に関する精度管理の内容を定め, 細胞検査士により陰性と判定された標本の 10%以上について, 細胞診専門医もしくは細胞検査士によるダブルチェックによる再検査を推奨している. したがって現状では, 細胞検査士により陰性と判定された標本の約 90%が再検査されることなく, 陰性と報告されている. わが国が用いているこの 10%ランダム再検査に比較して自動スクリーニング支援システムを使用したほうがより効率的に偽陰性を発見できるという事実から, 米国では自動スクリーニング支援システムを精度管理目的に使用することが 1996 年 FDA で承認され, 広く用いられている.
すでにわれわれは, 多施設共同研究として, 「子宮頸部細胞診精度管理における自動スクリーニング支援システムの有用性に関する検討」 を施行し, 細胞検査士により陰性と判定された標本を本システムで再検査した. その結果, 偽陰性すなわち, 見落とし例が 117 例 (1.19%) 検出でき, その内高度扁平上皮内病変以上と判定されたものが, 40 例 (34.2%) も検出でき, 精度管理上本システムが有用であることを報告した.
今後子宮頸部細胞診検体数が増加する現状を考えた場合, 偽陰性を減少させる効率的なシステム作りが精度管理上喫緊の課題である. 本報告では, 自動スクリーニング支援システムの子宮頸部細胞診精度管理における有用性について概説し, 多施設共同研究の追加研究結果と合わせて報告する.