2018 年 57 巻 5 号 p. 259-266
背景 : 胆汁細胞診に肝細胞癌と膵癌の 2 種類の癌細胞を認め, 剖検にて肝細胞癌と膵上皮内癌を確認した重複癌の症例を経験した.
症例 : 63 歳, 男性. HCV (+). 56 歳時に肝細胞癌にて肝部分切除術を受けた. CT 検査で左肝内胆管の拡張を認め, ERCP を施行. その後胆汁細胞診が計 5 回行われた.
1 回目の胆汁細胞診は陰性と報告したが再鏡検で肝細胞癌細胞の存在を確認した. 癌細胞は結合性の緩い集塊または散在性を示した. 癌細胞は大型, 淡明で広い泡沫状細胞質内に好酸性顆粒を有し, 核は小型円形であった. 免疫細胞化学染色で Hepatocyte (+), CK 7 (−) を示した. 2~4 回目の胆汁細胞診は陰性であった. 5 回目の胆汁細胞診では腺癌を疑う細胞集塊を少数認めた. その細胞は小型~中型で, ライトグリーンに染まる乏しい細胞質を有していた. 核形は不整であり, クロマチンは不均等に増量していた. これらは, Hepatocyte (−), CK 7 (+) であった.
肝腫瘍生検と胆管擦過細胞診を施行, 肝細胞癌と診断された. 肝不全が進行して死亡, 剖検が行われた. 肝腫瘍は肝細胞癌で, 膵臓に膵上皮内癌を認めた.
結論 : 胆汁細胞診において肝細胞癌と膵癌の 2 種類の癌細胞を認めたまれな 1 例であった.