日本臨床細胞学会雑誌
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症例
胆管癌子宮転移の 1 例
西村 宙起宇津木 久仁子杉原 武久 毅岡本 三四郎杉山 裕子高澤 豊竹島 信宏
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2019 年 58 巻 4 号 p. 167-171

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抄録

背景 : 他臓器癌の女性内性器への転移は大部分が卵巣転移であり, 子宮転移はまれである. 今回, 胆管癌既往のある患者における転移性子宮体癌を経験した.

症例 : 77 歳, 女性. 3 妊 3 産. 75 歳時に肝門部胆管癌 stage ⅣA の既往がある. CT で子宮内膜肥厚を指摘され当科紹介となった. 子宮内膜細胞診陽性, 組織診にて類内膜腺癌 Grade 1 と診断された. 子宮体癌 ⅠA 期相当と考え手術を施行した. 子宮体部左側と S 状結腸間に高度な癒着を認めたため, 単純子宮全摘術, 両側付属器切除術, および直腸低位前方切除術を施行した. 術後病理組織診にて胆管癌の子宮・S 状結腸転移と診断され, 消化器内科にて化学療法の方針となった.

結論 : 過去の報告において, 他臓器癌の子宮への転移は卵巣転移に比べてまれであり, 特に胆管癌の転移はきわめてまれである. 本例は術後の検討により, 胆管癌腹膜播種からの子宮・S 状結腸浸潤の可能性が考えられた. 本例においては胆管癌の細胞像および組織像が原発性子宮体癌と類似した形態であったこと, 術前細胞診, 組織診提出時に既往歴が伝わっていなかったことが正しく術前診断ができなかった理由と考える. 他臓器癌の既往のある場合には転移性子宮癌も鑑別診断に加える必要があることが再認識された.

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