日本臨床細胞学会雑誌
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原著
子宮体癌の術前子宮鏡検査と腹腔細胞診
平野 卓朗山上 亘真壁 健坂井 健良二宮 委美野村 弘行片岡 史夫平沢 晃進 伸幸青木 大輔
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2019 年 58 巻 5 号 p. 196-201

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抄録

目的 : 子宮体癌の腹腔細胞診陽性の背景因子を明らかにし, 子宮鏡検査が腹腔細胞診陽性に与える影響を検討することを目的とした.

方法 : 当院にて子宮鏡検査を施行した後に, 開腹もしくは腹腔鏡下に手術療法を施行した 414 例に関して, 腹腔細胞診の結果と臨床病理学的因子との関連を後方視的に検討した.

成績 : 414 例中 13 例 (3%) で腹腔細胞診陽性であった. 腹腔細胞診陽性の有意なリスク因子として, 単変量解析では類内膜癌 Grade 3+特殊組織型, 付属器転移, 大網転移, 腹膜播種が挙げられ (p<0.001), 多変量解析では類内膜癌 Grade 3+特殊組織型 (p=0.01) と大網転移が挙げられた (p<0.001). また リスク因子別では大網転移陽性例で腹腔細胞診陽性例が最も多かった (7/10 例, 70%). 12 例で腹腔細胞診陽性のリスク因子である類内膜癌 Grade 3+特殊組織型もしくは大網転移を認めた. 1 例のみリスク因子を有さず腹腔細胞診が陽性となった症例を認め, 多発子宮筋腫や子宮腺筋症によって, 子宮鏡の検査時間や還流圧を通常より要したことが原因と推定されたが, 術後再発を認めず経過している.

結論 : 術前に子宮鏡検査を施行したにもかかわらず腹腔細胞診陽性となった例は少なく, そのほとんどが腹腔細胞診陽性のリスク因子を有する症例であったため, 術前子宮鏡検査による腹腔細胞診への影響は軽微であろうと考えられた.

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© 2019 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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