日本臨床細胞学会雑誌
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原著
細胞保存液 「セルバース」 を使用した血性検体での LBC 標本作製の試み
則松 良明二村 梓川西 なみ紀黒川 哲司平井 康夫
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2020 年 59 巻 5 号 p. 209-216

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抄録

目的 : 細胞保存液セルバースTM (セルバ : メタノール 40.5%) での子宮内膜 LBC 標本作製手順策定のための予備検討として, 血性検体における種々の条件下での血液成分塗抹状態や細胞塗抹量を比較した.

方法 : 口腔内扁平上皮細胞を用い, 血液とともにセルバに添加後, 室温または冷蔵にて, 一定時間 (最長 72 時間) 保存した. その後, 種々の処理を施した BD シュアパス―LBC 標本での塗抹細胞数や背景所見を比較した.

成績 : セルバ―血液添加において, ①室温と冷蔵保存で, 前者の塗抹細胞数は後者よりも非常に有意に低値を示した. その結果から, ②室温保存で分離剤での密度勾配処理を試み, 保存 3 時間以内なら, セルバ―血液添加なしの細胞数に対する割合は約 6 割を保持したが, 時間経過とともに減少し, 特に保存 24 時間以降では 1 割程度と顕著な減少を認めた. その結果から, ③室温保存でセルバよりもアルコール濃度が低い (約 23%) BD 社の婦人科検体用細胞保存液を溶血剤として処理後, 分離剤処理を試みたところ, 保存 72 時間においても, 血液添加なしでの細胞数の 5 割台を維持し, 検討②よりも細胞数は著しく改善した.

結論 : セルバでの血性検体における細胞塗抹は, 室温保存での溶血剤・分離剤処理がベターな方法であることが明らかになった.

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