日本臨床細胞学会雑誌
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症例
気管支内腔に発生し術前細胞診断に苦慮した肺低悪性度粘表皮癌の 1 例
前本 直子許田 典男牧野 隆浩岡本 淳一窪倉 浩俊大橋 隆治内藤 善哉
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2020 年 59 巻 5 号 p. 217-223

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抄録

背景 : 肺粘表皮癌はまれな腫瘍であり, 粘膜下腫瘍様の形態をとることから気管支擦過細胞診での組織型推定がしばしば困難となる. 気管支擦過および洗浄検体にて術前細胞診断に苦慮した肺低悪性度粘表皮癌の 1 例を経験したので報告する.

症例 : 40 歳代, 女性. 検診にて胸部異常陰影を指摘され当院を受診し, 胸部 CT にて左下葉気管支内に境界明瞭な結節を認めた. 気管支擦過・洗浄細胞診では, 核がほぼ中心性で異型の弱い多陵形細胞と, ごくわずかではあるが核偏在性で細胞質に多量の粘液を含んだ泡沫状の細胞を認めた. しかしいずれも異型に乏しく, 細胞量も少なかったため, 組織型推定は困難であった. 最終的に生検および手術検体で肺低悪性度粘表皮癌と診断された.

結論 : 下気道発生の粘表皮癌の細胞診断においては気管支擦過細胞診に比べ, 穿刺吸引細胞診での検体採取が有用とされているが, 異型の弱さや採取されてきた細胞の各成分の割合, 細胞量によっては診断が困難となることがある. 細胞の採取方法にとらわれず, 特徴的な細胞像を理解し, 臨床像, 画像所見や腫瘍の発生部位から粘表皮癌の可能性を念頭に置くことが肝要である.

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