日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
筋上皮癌を癌腫成分とする多形腺腫由来癌の 1 例
立花 幸木村 雅友田中 千琴前西 修水野 瑶子植田 清文白石 直樹京田 明子上杉 忠雄佐藤 隆夫
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 59 巻 5 号 p. 230-236

詳細
抄録

背景 : 多形腺腫由来癌は, 先行して存在する多形腺腫が悪性化したものである. 癌腫の組織型は多様だが, 大半は唾液腺導管癌か筋上皮癌である. 細胞診で多形腺腫由来癌の悪性・良性の両成分を認めることは少ないが, 今回両成分を細胞診標本に認めた多形腺腫由来筋上皮癌の 1 例を経験したので報告する.

症例 : 90 歳代, 女性. 13 年前から右側口蓋の粘膜下腫瘤を指摘されており, 臨床的に良性とされ経過観察を受けていたが, 7 ヵ月前から急速に増大してきたため, 治療方針決定のため穿刺吸引細胞診を施行した. 細胞所見は大型異型細胞が結合性の弱い集塊で出現しており, 癌腫と考えられたが組織型は確定できなかった. 摘出標本の組織診では, 腫大した不整形核を有する多辺形の腫瘍細胞が胞巣状に増殖しており, 免疫染色結果と合わせて筋上皮癌と考えられた. 加えて腫瘍組織内に多形腺腫成分が確認され, 多形腺腫由来筋上皮癌と診断された. 組織診後の細胞診標本再検討で多形腺腫成分が確認された.

結論 : 長い経過を示す唾液腺腫瘤が急速に増大した症例では, 多形腺腫由来癌の可能性を疑い, 多形腺腫と癌腫の両成分が出現しうることを念頭に, 細胞診標本を観察すべきである.

著者関連情報
© 2020 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top