2020 年 59 巻 6 号 p. 305-310
背景 : 唾液腺原発の扁平上皮癌はきわめてまれで, 予後は非常に悪い. 今回われわれは, 粘表皮癌との鑑別に苦慮した, 細胞質内空胞の形成を伴う, 右顎下腺原発の扁平上皮癌の 1 例を経験したので, 細胞学的所見を中心に報告する.
症例 : 65 歳, 男性. 1 ヵ月前から右顎下部の腫脹を自覚し当院を受診した. 穿刺吸引細胞診にて, ライトグリーン濃染性の細胞質を有した細胞と, オレンジ G 好性の細胞質をもつ角化細胞がみられ, 扁平上皮癌と診断されたが, 細胞質内空胞を有する細胞が少数認められ, 粘表皮癌との鑑別に苦慮した. 組織学的に腫瘍は, 中~低分化型扁平上皮癌で, 粘液産生像はなかった. 戻し電顕にて, 拡張した小胞体が観察され, 細胞質内空胞との関連性が示唆された.
結論 : 扁平上皮癌細胞では, 時に細胞質内空胞がみられる場合がある. 粘液産生細胞と見誤らないことが肝要である.