日本臨床細胞学会雑誌
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症例
術後に形成された空洞に再発をきたした乳頭状腎細胞癌の 1 例
橋本 哲也野並 裕司金室 俊子吉田 一彦鬼塚 裕美板垣 裕子増井 憲太山本 智子澤田 達男長嶋 洋治
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2021 年 60 巻 3 号 p. 150-155

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抄録

背景 : 乳頭状腎細胞癌 (papillary renal cell carcinoma : PRCC) は, 細胞の異型性から type 1 と type 2 に分類される. 腎細胞癌の腫瘍細胞が体腔液や術後に形成された空洞に貯留した液中 (術後空洞貯留液) に出現する頻度は低い. 今回, 腎摘後の術後空洞に再発し, 術後空洞貯留液細胞診で陽性を示した PRCC (type 2) を経験したので細胞像を中心に報告する.

症例 : 50 歳代, 男性. 透析歴約 8 年. 経過観察中の放射線画像で, 右腎腫瘍を認めた. 腎細胞癌が疑われ, 腹腔鏡下腎摘除術が施行された. 病理診断は PRCC (type 2) であった. 術後約 1 ヵ月, 腹膜播種と腰椎転移が疑われ, 腎摘後の術後空洞貯留液が, 細胞診断のため提出された. 標本では, 炎症性背景中に, 円柱状から類円形, 核偏在性, 核形不整, 核小体肥大, ライトグリーン好性細胞質を有する異型細胞の集塊を認めた. 細胞判定は陽性 (positive) であった. 体腔液中に出現した場合であれば, 腺癌や悪性中皮腫を疑う形態であったが, 臨床経過から PRCC の再発を推定した. セルブロック法による免疫細胞化学では, CK7, PAX8 陽性, AMACR, CK20 陰性であった. AMACR 陰性は PRCC として非定型的だが, 以上より腎細胞癌の再発を推定した.

結論 : 術後空洞貯留液中に乳頭状異型細胞がみられた場合, 一般的な鑑別である腺癌, 悪性中皮腫とともに, 臨床像を考慮し, 蓋然性の高い組織型の推定が肝要である.

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