日本臨床細胞学会雑誌
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症例
術中腹水中に印環細胞が出現し, 胃癌との鑑別が困難であった浸潤性小葉癌大網転移の 1 例
水口 聖哉湊 宏黒川 綾子大西 博人新谷 慶幸吉谷 久子二ッ谷 千鶴片柳 和義車谷 宏
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2021 年 60 巻 5 号 p. 284-288

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抄録

背景 : 浸潤性小葉癌は細胞質内に粘液を有し, 印環細胞の像を呈することがあり, その転移は胃癌との鑑別が問題となることがある. 今回われわれは, 腹水中に印環細胞が出現した浸潤性小葉癌の 1 例を報告する.

症例 : 50 歳代, 女性. 4 年前に他院にて乳癌の手術歴あり. 腹部膨満感を主訴として当院を受診し, 内視鏡および腹部 CT により 4 型胃癌, 腹水貯留, 癌性腹膜炎が疑われた. 審査腹腔鏡が施行され, 術中に腹水と大網が採取された. 腹水細胞診では, 単一を主体とする粘液空胞を有する印環細胞が散見された. 異型細胞は線状配列を示し, N/C 比が高く小型均一であった. ライトグリーン好性の細胞質を有し, 微細クロマチン増量, 腫大した核小体を有し, 低分化腺癌と診断された. 大網にも低分化腺癌の転移を認め, 免疫染色では estrogen receptor (ER) と GATA binding protein 3 (GATA-3) が陽性で, epithelial-cadherin (E-cadherin) は陰性であった. 他院の乳癌手術標本は大網の組織像と類似しており, 浸潤性小葉癌の転移と診断された.

結論 : 腹水細胞診において, 出現細胞に線状配列がみられたり, 多形性に乏しく, 小型で単空胞細胞が主体であったりした場合には, 浸潤性小葉癌の転移の可能性を考え, 臨床所見を確認する契機になりうるものと考えられる.

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