日本臨床細胞学会雑誌
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症例
浸潤性尿路上皮癌の 1 例
―栄養膜細胞への分化を伴う尿路上皮癌細胞の細胞像を中心に―
花見 恭太安達 純世豊永 安洋石田 康生山﨑 一人
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2023 年 62 巻 6 号 p. 293-299

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抄録

背景:膀胱尿路上皮癌のうち,栄養膜細胞への分化を伴う亜型は診断時に進行癌のことが多く予後不良とされている.今回われわれは浸潤性膀胱癌手術症例 54 例の細胞診・病理組織検体を再検討する機会に,栄養膜細胞への分化を伴う浸潤性尿路上皮癌の 1 例を認めたので,その性状について報告する.

症例:82 歳,女性.膀胱炎症状を主訴に来院,超音波検査にて膀胱前壁に腫瘍を認めた.尿細胞診では不規則乳頭状の異型尿路上皮集塊と,豊かなレース状の細胞質と粗造なクロマチンの増量を示す単核細胞や多核・核の過分葉を示す多形細胞を孤在性に認めた.TURBT 標本,膀胱全摘標本においては表層側に通常型の浸潤性尿路上皮癌,深部においては広く栄養膜細胞への分化を示す成分がみられ,固有筋層への浸潤と脈管侵襲を認めた.免疫染色においては多核・核の過分葉を示す細胞や多形を示す単核細胞などが HSD3B1 に陽性を示した.術後 3 年で多臓器に転移をきたし永眠された.

結論:栄養膜細胞への分化を伴う浸潤性尿路上皮癌を早期に診断するうえで尿細胞診の果たすべき役割は大きい.確実な推定診断には特異性の高いマーカーを用いた免疫染色が有用と考える.

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© 2023 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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