2025 年 64 巻 1 号 p. 18-23
背景:超音波気管支鏡ガイド下生検にて腫瘍細胞が出現した中皮腫を経験したので報告する.
症例:60 歳代,男性.咳や痰,労作時の呼吸苦を自覚し近医受診.画像検査で中皮腫が疑われたため,当院へ紹介受診となった.CT では左胸膜の凹凸不整なびまん性肥厚と被包化胸水,両鎖骨上窩から縦隔に多発するリンパ節腫大を認めた.細胞診では,異型細胞は N/C 比の高い乳頭状集塊や,中等度の N/C 比で緩いシート状集塊で出現していた.異型細胞の核は中心性で単核や 2 核細胞もみられ,細胞質は厚みがあり多辺形,細胞相接像や window 様の間隙がみられた.小型のオレンジ G 好性細胞も認められた.組織標本では,腺管乳頭状,微小乳頭状,敷石状などの形態を示す細胞集塊が多数出現しており,核は軽度の大小不同や明瞭な核小体,2 核も認められた.各種免疫組織化学染色でも中皮腫として矛盾しないものであった.
結論:超音波気管支鏡ガイド下生検を用いた中皮腫の診断では,体液液検体の特徴的な所見とは異なることがあるが,小型オレンジ G 好性細胞の出現は中皮腫診断の補助となりうる.