2025 年 64 巻 1 号 p. 12-17
背景:胸膜中皮腫と肺腺癌はともに胸水細胞診においてしばしば鑑別を要する疾患であるが,両者が併存することはまれであり,同一標本中に出現した細胞像の報告はない.今回われわれは,胸水中に中皮腫細胞と肺腺癌細胞が同時に出現した症例を経験したので報告する.
症例:患者は喫煙歴を有する 70 歳代,男性.息切れを主訴に近医を受診し,肺癌の精査目的にて当院紹介受診となった.胸水細胞診にて 2 核細胞や hump 様細胞質突起を有する大型細胞を孤在性に多数認め,これらはセルブロックによる免疫染色にて calretinin,WT-1,CK5/6 が陽性で中皮腫細胞と判定された.また,一部に TTF-1,CEA 陽性の腺癌細胞も少数認められ,中皮腫細胞と肺腺癌細胞の併存が示唆された.
結論:中皮腫細胞と肺腺癌細胞が同一標本中にみられることは明らかにまれである.胸水セルブロックによる免疫染色や分子生物学的手法の施行は胸水細胞診の診断精度を向上させるうえで有用である.