2025 年 64 巻 1 号 p. 24-30
背景:T リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)はしばしば縦隔腫瘤,胸水貯留を呈する.今回われわれは胸水細胞診にて異型細胞の背景に 5%以上の好塩基球増多を伴った early T-cell precursor lymphoblastic lymphoma(ETP-LBL)1 例を経験した.
症例:14 歳,男性.遷延する咳嗽,微熱のため胸部 X 線検査を実施し,胸水貯留と前縦隔の腫瘤性病変を指摘された.胸水細胞診では,微細顆粒状クロマチンを示す異型細胞を認め,リンパ球系細胞由来の悪性腫瘍を疑った.背景には好塩基球の増加(有核細胞中の 7.3%)を認めた.異型細胞は,セルブロックおよび縦隔生検の免疫組織化学染色(IHC)にて,CD3,CD99 陽性,CD4/CD8,TdT 陰性で,骨髄浸潤は 25%未満であり,T-LBL と診断した.さらに,CD1a,CD5 陰性,CD117 弱陽性であるため,ETP-LBL と分類した.
結論:リンパ腫の病型診断は治療方針の決定に重要であり,IHC によって ETP-LBL と診断できた.一方,胸水中の好塩基球増多は,T-LBL の診断に直接結びつく所見ではなく,腫瘍に伴う局所浸潤の可能性を考えた.