2025 年 64 巻 1 号 p. 7-11
背景:腎集合管癌は腎腫瘍の中でも非常にまれであり,予後がきわめて不良とされている.そのため的確な診断と早期の治療開始が必要とされる疾患である.今回われわれは臨床的に悪性リンパ腫が疑われたが,術中に摘出されたリンパ節の捺印細胞診で最初に腺癌と診断し,その後に行われた腎生検で腎集合管癌と診断された一例を経験したので報告する.
症例:70 歳代,女性.腹痛にて来院,CT 検査にて腹部大動脈周囲から両側腸骨動脈周囲にかけて多発するリンパ節腫大が認められ,臨床的に悪性リンパ腫が疑われた.その他の所見として肝臓と右腎臓に低吸収域がみられた.悪性リンパ腫の有無を確認するために腹腔リンパ節の術中迅速捺印細胞診を実施したところ,壊死性背景に多数の上皮性異型細胞を認め,管状または索状配列を示し,核の大小不同,核分裂像が多くみられたことから腺癌と診断し,その後の組織診断および免疫組織化学的染色の結果から腎集合管癌と診断された.
結論:本例では,リンパ節の転移性腫瘍から迅速捺印細胞診断を用いて,腎集合管癌の細胞学的特徴を実証することができた.