2025 年 64 巻 4 号 p. 200-203
背景:囊胞腺癌は囊胞形成と乳頭状増殖を特徴とするまれな唾液腺悪性上皮性腫瘍である.今回,顎下腺原発囊胞腺癌の症例を経験したので報告する.
症例:60 歳代,男性.2 年前に右顎下部の腫脹を自覚.近医にて囊胞性病変経過観察中であったが,緩やかに増大傾向を示すため当院紹介受診となった.穿刺吸引細胞診検査にて腺癌が疑われ,右顎下腺摘出術にて囊胞腺癌と診断した.細胞診では不規則重積性を示す乳頭状上皮集塊が散在性に出現していた.細胞質はレース状で一部空胞を有しており,核は偏在し,不整形で核小体腫大を認めた.
結論:唾液腺囊胞性病変において腺癌を疑う所見が得られた際には囊胞腺癌も鑑別疾患に挙げることが重要である.