日本臨床細胞学会雑誌
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大気汚染地域に居住する慢性閉塞性肺疾患患者の喀痰細胞診について
佐竹 立成夏目 園子青木 毅中川 武夫尾関 俊紀鬼頭 みち子林 正人
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1981 年 20 巻 1 号 p. 36-46

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抄録

名古屋市南部のいわゆる大気汚染地域に居住する慢性閉塞性肺疾患患者312名を対象にして喀痰細胞診を施行し, その結果について報告した.
喀痰中に含まれる化生, 塵埃, 気管支上皮細胞, クルシュマン螺旋体および癌細胞の有無, 出現の程度と, 年齢, 喫煙歴等の臨床事項総計76項目をコンピュータで処理し, 喀痰成分と臨床事項との相関, 喀痰成分相互の出現率についての相関, 大気汚染と喀痰成分との関わり等について調査し考察した.
(1) 臨床事項と喀痰成分出現率との関係では, 血中と喀痰中の好酸球の出現頻度が正の相関を示した.
(2) 喀痰成分相互の関係では, 塵埃細胞出現の程度が, 他の成分の出現頻度と相関しており, 大気汚染は塵埃細胞だけでなく, 螺旋体, 気管支上皮細胞, 化生細胞の出現頻度をも左右する因子となり得ることが推測された.
(3) 肺癌は5名発見されており, この集団は肺癌High risk groupといえる. 肺癌の早期発見とともに大気汚染との関係を明らかにしていくためにも, 今後の追跡調査が必要である.

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