日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺疾患における細胞内小腺腔 (Intracytoplasmic lumina) の細胞診断学的価値について
土屋 真一中川 仁藤原 睦憲田久保 海誉山田 邦雄大谷 恵美子花岡 ふみ子畠山 重春高山 昇二郎
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1981 年 20 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

乳癌は, 近年, その発病率の上昇につれ現在まで, 多くの研究がなされてきているが, 特に電顕の導入により, その細胞微細形態が詳細に検討されるようになってきた. われわれは乳癌細胞に比較的特異的に見出される細胞質内小腺腔 (Intracytoplasmic lumina: ICLs) の形態学的特徴と, 正常乳腺から乳癌各組織型に至るICLsの発現頻度を電顕的に検索し, 悪性化するほどICLsが増加することを報告してきた.
現在, 細胞診検査におけるその確診率は70~80%で, 特に良性乳腺疾患 (線維腺腫, 乳腺症) と硬癌との鑑別には, しばしば苦慮することが多いが, 検索した症例132例 (正常乳腺4例, 良性乳腺疾患23例, 癌105例) の細胞診について, 電顕で明らかにされたICLsを検討した結果, 正常乳腺; 0.0%, 乳腺症; 6.7%, 腺維腺腫; 0.0%, 乳頭腺管癌; 10.0%, 髄様腺管癌; 8.6%, 硬癌; 33.3%の症例にICLsを認めた. このように, 癌症例は, 非癌症例に比べてICLsの発現頻度が高く, 従来言われてきた乳腺細胞診断基準に加えてICLsの存在を見出すことが, 悪性としての確定診断の一助になると思われた.
また, 転移癌の原発巣検索に関して, このICLsがみられた時は乳腺の精査を行うことが肝要であると考える.

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