日本臨床細胞学会雑誌
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直腸曠置法による造腟術後患者の検討
新腟細胞像の経時的変化を中心に
鈴木 由美子萩原 暢子飯藤 容弘寺井 晋植木 実杉本 修
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1982 年 21 巻 4 号 p. 709-713

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抄録

われわれは腟欠損症の5例に, 直腸を用いた造腟術を施行し, 術後の新腟粘膜の経時的変化をスメア像を中心に検討した. 対象症例は, 18~21歳で, 術式は, 藤原氏法による直腸曠置術を行い, 術後2週目より1~3ヵ月ごとにスメアを採取して, 術後2年から5年間追跡し, 適時試験切除を行った.
その結果, 術後2週目では, 無数の赤血球を背景とし, 粘液を豊富に有する腺上皮細胞の剥離が多くみられ, 1ヵ月を過ぎる頃には, 赤血球は減少した. 術後4ヵ月までは, 炎症細胞や細胞破砕物がしばしばみられた. シート状, 柵状に剥離した円柱上皮細胞は, 全経過を通じて認められたが, 細胞質に粘液を貯留した細胞は漸時減少した. 術後2~5年目の組織所見では, 直腸粘膜構造を保ち, 被覆上皮および腺窩の腺上皮細胞ともに, ほとんど変化を認めなかった. なお, 扁平上皮化生は, 細胞診および組織所見からもうかがわれなかった.
臨床的経過では, 腟の萎縮, 狭窄はなく, 性生活にも満足が得られており, 予後は良好であった. さらに5年以上の長期経過後の臨床および組織学的な変化について, 追跡する必要があると考えられた.

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