日本臨床細胞学会雑誌
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悪性線維性組織球腫の細胞診
筒井 康子陣内 城司篠原 典夫
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1983 年 22 巻 3 号 p. 545-553

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抄録

四肢軟部腫瘍のなかで最も頻度の高いとされる悪性線維性組織球腫 (以下MFHと略) の細胞形態を臨床診断の一助とする目的で観察した.なお一部骨原発MFHについてもあわせて検討した.
昭和52年から56年の問に細胞診を行った骨腫瘍44例, 軟部腫瘍30例のうち, 軟部原発MFH6例, 骨原発3例について軟部吸引, また手術時の捺印標本を作製し, Papanicolaou, Giemsaおよび特殊染色としてPAS, 酸フォスファターゼ, アルカリフオスファターゼ染色を行った.
細胞形態の特徴は線維芽細胞様細胞, 組織球様細胞, その中間を思わせる細胞が出現する.線維芽細胞様細胞の核は10ないし20μ前後である.全体的に核は小型で, 核形は類円形, 楕円形, 紡錘形でN/C比は中等度ないし大で核小体は0.1ないし3μと小さく, クロマチンは細顆粒状ないし細網状, クロマチン分布も均一で核中心性, 細胞質は有尾状を示し核縁肥厚も少ない.一方, 組織球様細胞の核形は楕円形ないし不整形, N/C比は中等度ないし大で20ないし70μの核を有する細胞は著明な大小不同を伴う.クロマチンは粗網状で分布は不均等, 核縁肥厚を示し, 15ないし30μの著明な核小体を有するbizarreな単核, 多核巨細胞もみられる.特殊染色は酸フォスファターゼ染色は全症例が陽性を示し, PAS染色で症例によって一部陽性を示すものもあり, アルカリフォスファターゼ染色も症例によってごく一部に陽性を示した.これらの細胞所見と臨床像を十分に参考にすれば, 治療方針に役立つ診断を下し得るとの結果を得た.

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